• 「樹木医」であり、「アーボリスト」であるということ。

     「樹木医」と「アーボリスト」はどちらも樹に関わる仕事なのですが、少し役割が違います。
     「樹木医」というのは、樹のお医者さん。樹を診断して、治療するのが仕事です。樹そのものだけでなく、周りの環境についても広く調べ、総合的に診断・治療します。例えば、弱っている樹があったら、樹だけを診て判断したりしません。樹の周辺にも目を向け、高いところにある枝葉によって光が遮られていないか、害虫によって弱っていないか、やせた土壌によって栄養不足に陥っていないかなど、樹が生育している生態系も含めてトータルに診断します。
     一方、「アーボリスト」は大きな樹の維持と管理が仕事です。日本語では樹護士(じゅごし)と呼ばれ、厳密には8メートル以上の樹木を扱います。「アーボリスト」たちは、人と樹が仲良く暮らすための知恵が詰まった思想、アーボリカルチャーにもとづき、樹にまつわるさまざまな活動をしています。
     私は「樹木医」として、また「アーボリスト」として、人と樹が共存できるしくみを作るために広く活動を行なっています。

  • 「樹木医」と「アーボリスト」の活動を支えている経験の深さ。

     私は樹木の診断から治療まで一貫して担うことができます。認定マスターアーボリストという世界で一番難しい実技試験を取得し、樹木医として10年以上の経験があります。長年、樹を護るための考え方とスキルを磨いてきましたので、地球や樹に優しい治療を実施することができるのです。樹の高いところや枝先は、手が届かなくて剪定しづらいため、多くは “切れるところから切断しよう”、“危ないので伐採しよう” という判断になりがちです。でも私のスキルを活かせば、診断をしたうえで、明らかに危険なものは伐採を行ない、危険でないものは樹のほんの一部のみ剪定するだけにとどめるなど、樹が持つ本来の生命力を蘇らせることができるのです。
     例えば高いところの枝葉を切る場合、一般的には重機を使って登りますが、私でしたらロープを駆使して登り、高いところにある枝を歩いて枝先まで行き、最小限の枝葉だけを切り落とす処置をすることができます。下部に構造物がある場合はクレーンなどを利用しますが、切り落とす重量とアンカーの強度を計算して安全で確実に大枝を切る技術も獲得しています。このスキルはアーボリストとしてのプロの技術です。また、国際資格であるISAの認定ツリーワーカー/クライマーズスペシャリストやATI認定マスター樹護士アーボリストなどの資格を取得してしっかり知識を蓄え、ツリークライミングの日本大会に優勝し、国際大会に参加する樹上移動技術があります。そのためクレーンや高所作業車が入らない場所での診断、剪定、伐採などを得意としています。

  • 一番思い出に残っているのは、世界で最も巨木のプロジェクト。

     一番思い出に残っているのは、アーボリストトレーニング研究所が主催するアメリカ西海岸に生育するジャイアントセコイアのプロジェクトに参加したことです。ジャイアントセコイアとは、現存する最も巨大で古い樹木の一つで、高さ100メートルほどにもなる巨木。このセコイアのメンテナンスをする機会に恵まれました。大きくなったセコイアを護り、より健やかに成長させるためには、樹や周りの環境を整える必要がありました。この経験から私は、日本にはない樹高でも安全に作業できる技術を身に付けています。ですので、どんな樹木でも樹上作業はお任せください。
     それから西海岸のカリフォルニアは、乾燥していて山火事が多い地域。山火事があることによって生態系の循環が成り立っている土地です。そのため山火事からセコイアを守らなくてはならないというミッションもありました。私たちはプロジェクトの中で、セコイアと周辺の木々との間の距離を十分に取る処置も施しました。
     プロジェクトが終わり、帰国してしばらく経った頃、カリフォルニア州で例の山火事が起こったのです。大きな被害となり世界的ニュースになったのですが、自分たちがケアしたセコイアは無事だったんですよね。本当に嬉しい報告でした!

  • 私の仕事のポリシーは、「樹は動けないので、私が動いてそちらへ行きます!」。

     もし大きな樹木についてお悩みを抱えていましたら、気軽にお聞かせいただきたいと思っています。なぜなら、私の喜びは世界中の樹木に会うことだからです。「樹は動けないので、私が動いてそちらへ行きます!」というのがポリシー。困っている樹木があれば、全国どこへでも足を運びます。公園、並木道、街路樹、裏山、神社仏閣、ゴルフ場などの樹木のメンテナンスについては普段からよくご相談をいただいています。
     以前ご依頼があったケースでは、神社裏にある樹木を伐採してほしいという相談がありました。成長しすぎた樹木が背が高く、危険を感じるというのが理由でした。でも本音では、伐採したくないということがわかりました。そこで風の動きを読み、地形、土壌の質や、生態系などを調べて、樹と人が共存するための計画を提案。伐採せず、剪定やツリーサポートシステムを利用して大切な樹木を護る選択ができたのです。さらに将来的にどのようなメンテナンスをしていったらよいかもアイデアをシェアしました。
     大きい樹木はメンテナンスを怠りがちです。さらにメンテナンスも大変なため、問題が起きるとすぐに “伐採” と決めてしてしまう傾向があります。でもぜひ、正しい知識を持って、広く眺めていただきたい。100年以上も生きる樹と、人が共に支え合って生きることができるのです。そのような素晴らしい可能性に多くの人に気づいていただきたいです。